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ちいちいももんがあ
なしはうまい。
甘い汁滴る白い果肉に歯を立てると、しゃり、という音とともに、さわやかな香りが鼻をぬける。
口の中は、もう、パラダイス…。


普段はバナナ以外の果物なんてほとんど買わない私が、思いつきで手にしたなし。
その、たまにしかやってこない特別なお客様とのしっとりとした素敵な時間は、呼んでもいないのに無理やり入り込んできたおぞましき侵入者によって、突然に、そして急激に失われたのだった。

「す、すごいものを見つけてしまった。」

そう弱弱しい声を発したのは、すばらしき味わいをできる限り長く堪能するために細かく等分されたひとかけのなしを、隣でもそもそとほおばっていたその人である。今後、このおぞましき侵入者の第一発見者を、便宜上「執行委員」とでも呼ぶことにしよう。さっきまでの「おいしいねぇ」という幸せそうな声はどこへやら。執行委員の表情は恐怖によってゆがめられていた。

白い壁の一箇所を示す執行委員の指の先に目をやる。
いまだ、敵の恐ろしさに関して何の事前情報も持たない素朴な私の視線は、その怪しくさまよう黒い影を的確に、必要以上にはっきりくっきりと捉えてしまった。

黒い身体。
質感は、つるつるではなく、ふさふさ。
いや、とげとげ?もさもさ?
いったいどこから侵入したのだろう、全長5、6センチもあろうかというそのふさふさ野郎は、我が家の白壁にしっかと長い足をのばしている。
その足の数は、ちゅうちゅうたこかい、8本。
8個の目は不敵な笑みを見せていた。
少なくとも、そう見えた。

「ひぃ」

という情けない声を発して、ざざっと後ろに退いたのは、そうこの私、「のんびりなしを食う空間維持対策本部長」である。
わが本部長宅は、確かによくその類の生物が出没する家ではある。とはいえ、いつも出会うお仲間はもっとちっこくて、でかくても1センチに満たないほどのかわいいもんである。あんなふうにどでんと構えたりしてないし、もさもさしてもいない。
あぁ、泣きそうだ。
わんわんと泣いて、大人がちょちょいと退治してくれるのならそうしたい。
しかし、私はもう22歳の大人だ。
迫りくる困難は、自分で解決すべきお年頃なのだ。

そうして思案した後、本部長は動いた。
その力強くしなやかな腕を高らかに掲げ、こう叫んだのだ。


「執行委員、かかれ!」


その間違った凛々しい声を聞いてあっけにとられたのは、他でもない。その命を受けた執行委員である。
「いや、しかし本部長。単に『かかれ』と言われましても・・・。あやつは、あのもさもさとした体つきには似つかわしくない俊足を有しております。何の策もなしに、ただ闇雲に立ち向かっても、そうやすやすと捕らえることはできますまい。」

そうして、「第1回 のんびりなしを食う空間維持対策本部対策会議」が開かれた。
「あの空き箱に、あやつを閉じ込めて外に捨てるというのはどうだろう。」
「それでは、壁の高いところに登ってしまったあやつに手が届きません」
「なるほど。」
「ここは一つ毒霧を使いましょう。毒霧に包まれればあやつもすばやく壁を這う力を失いましょう。そうした時に、いよいよ紙で包んでぽいしてしまえばよいのです。」
「なるほど、なるほど。では、そのように。」

態度だけは「本部長」な本部長が不安げに見守る中、執行委員はスプレー缶を手にした。ふたをとり、狙いを定めて缶の頭をぐいと押し込む。
しゅわわ、という音とともに白い霧が黒いもさもさに吹き付けられた。

その時だった。
黒いもさもさは、その長い8本の足を音もなく動かし、壁をつたい、本部長が身を潜める布団のそばへとやってきたのだ。

「ぎゃーーーー!」

奇怪な声が響き渡る。
逃げ惑う本部長。
それをただ眺めるだけの執行委員。

はっとして敵のほうに視線を戻す。
敵の姿は忽然と消えている。
「あやつは」
本部長が問う。
「物陰に」
執行委員が答える。

立てかけられたギターをゆっくりと傾ける。
いるではないか。
その裏側、ギターの陰の中に。
少しばかり俊敏さを欠いたその物体が。

いや、まだ油断は許されない。
もう一回だけ。
そう、もう一回だけあの毒霧をぶっかけてやれば、完全にもさもさの動きを止められるはず。
今度は、挟み撃ちだ。

執行委員が本部長にもう一本のスプレー缶を差し出す。
本部長がギターの右に、執行委員が左に位置する。
ふたをとる。
狙いを定める。
二人が息をそろえる。


「今だ!」





その後、敵がどうなったのかはよく覚えていない。
「今だ!」の声と同時に目を閉じてしまったからだ。もちろん、スプレーを吹きつけながらではあるが。


こうして、平穏は、私と執行委員と、そしてすうかけらのなしのもとに戻ってきた。その平穏は、先ほどの純粋な平穏とは違い、恐怖の余韻と少しの疲労感を含んでいた。しかし、それでも平穏とはすばらしい。
その後、その勇気をたたえられた執行委員が、なしをひとかけら多く与えられたのは言うまでもない。
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【2006/09/19 13:30】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(0) |
休日の過ごし方
家にいると、何時間もテレビを見続けたりしてしまうので、研究室で勉強することにする。
日曜だし、どうせ誰もいないからと、すっぴんで髪もぼさぼさで、そして、なんのへんてつもないよれよれの服を着て家を出る。
途中、サンクスで食料を調達する。
まずは、ミルクティー。
私はミルクティーが好きなので、一緒に食べるものがたとえ納豆巻きであったとしても、ためらわずミルクティーを選ぶ。
しかし、長時間の研究室滞在を考えると、500mlパックでは足りないだろうと、1lパックの麦茶も買う。
お菓子も買う。
以前なおこさんから分けてもらっておいしかったので、BAKEショコラを買う。
レシートに印字された金額は800円を超えた。
なんてことだ。これなら、外でちょっといいランチが食べられてしまう。
愕然としながら、これは一日で食べてしまうつもりはなく、残りは研究室の冷蔵庫に保管しておくのだから、ランチ一回分とは800円の意味が違うはず、と自分に言い聞かせる。
なんだか、荷物が増えた。
カゴに入りきらない買い物袋を取っ手にさげたままチャリをこいで研究室にむかう。
長袖を着てきたが、思ったより暑い、が、汗は出ない。

一人の研究室。
まるで自分の部屋のようで気楽だが、なんとなくさびしい。
クーラーがぼうぼうと吹き付ける真下で、納豆巻きを食べながら、本棚にいつの間にか置いてあったワンピースを読む。
あれ、勉強しに来たんじゃなかったんだっけ?
納豆巻きのご飯が硬い。
よく噛んで食べる。
時間がかかる。
やっと食べ終わり、いい加減勉強しろよと思いつつワンピースを読む。
まるで自分の部屋のように気楽なので、ついついだらしない姿勢になる。
ソファーに浅く腰掛け、体育座りのような体勢でひざ小僧の上に漫画を乗せて読む。
うーむ。
楽しい。

がちゃり。
研究室のドアが開く。
思いがけないことにびくりとする。
急いで姿勢をただす。
ドアの隙間から、見慣れた茶色と白色のよこしまの服がのぞく。
あ、ふくしまさんだ。
思いがけず、ぱっと、一人の気楽でさびしい空間が、気楽ではないがさびしくもない空間に変わった。
しかし、いつまでも漫画を読んでいるのは恥ずかしいのでちゃんと勉強することにする。

一生懸命わき目もふらず勉強をしているふくしまさんの脇で、たまに集中力を欠いて遊んだりしながらもなんとなく勉強する。
あと何時間やると、足りるのかしら、などと、テキストの残りのページ数を何度も確認する。
なかなか進んでいるように思えて、なかなか進まないものである。

ふくしまさんが立ち上がる。
帰るのかしら。
そうか、帰るのか。
と思い。
そうか、帰るのか。
と、口に出して言ってみる。
別れを告げて、ふくしまさんが研究室を出て行く。
また、気楽でさびしい時間がはじまる。

さて、勉強でもするかな。
【2006/07/23 19:47】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(6) |
コンサートには双眼鏡を
私は、基本的に音楽をCDできくことが不得意である。
音楽をききながら何かをすることが苦手で、音楽をききながら本を読んだり、ものを書いたりすることがあまりうまくできない。

特にクラシック音楽をCDできく時など、本当にどうしていいかわからなくなる。
クラシックは私に「きけよ」と言わんばかりに、突然じゃじゃーんとなったりしーんとなったりする。
本を読んでいても、時折そんなふうにして「ねえねえ、きいてる?ほら、今いいとこなんだよ」と話しかけてきたり、「あっそ、無視するんだ」とすねたりするもんだからやっぱりそれを無視してうまく本を読むことができない。
それが好きな音楽だったりすると、なおのことその声にこたえて真剣に話をきいてしまうから、もちろん本なんて読めない。

だからといって、本を閉じてその声にだけ集中しようとしても、20分もすると飽きてしまう。
そしてまた、他の本なり漫画なりに気を取られ始めて、同じ事を繰り返してしまうのだ。

しかし、コンサートは別だ。
なにせ、いったん会場に入ってしまえば本が読めない。
読まなくてよい。
ひたすら音楽に集中したり、時には心地よさにまかせて眠ってしまえばいい。
クラシックを聴きながら眠るのは得意である。

そして、コンサートは飽きることもない。
私にとってコンサートは、きくもんでなくて、みるもんなのだ。
私はクラシックのコンサートには双眼鏡を持っていく。
演奏している人の身体の動きや、表情を観察するためだ。
演奏者が、音楽にのせて身体をゆらゆらさせる。
悲しい旋律にあわせて眉をひそめる。
まるで演奏ではなく、演劇でもしてるかのように。

演技者の数が3人くらいと少ない時は、ますます私はきくことよりもみることに夢中になってしまう。
3人の動き方、表情の変化の違いをみくらべて、ああ、この人は自己陶酔型だな、とか、この人は割と冷静で、周囲とのバランスをとることを大事にしてるな、とか、そもそもこの人はあんまり動かないな、と、キャラクターを設定し始める。
そして、この人は好きだけど、この人は嫌い、なんてことを決めてますますこの演劇に没頭していくのだ。

私は、正直クラシックにはまったく詳しくない。
どの旋律にはどんな意味と役割があって、この場合の解釈はどうで、どの演奏家はうまいが、どの演奏家はヘタだ。
なんてことはまったくわからない。
つまり、耳で判断するようなことは、何もわからない。
CDに入っている曲なんて、たいがい上手にきこえるし、演奏家や指揮者が変わっても同じ曲は同じにきこえる。

音楽はみて楽しむ。
やっぱりCDとは、うまくつきあえない。
【2006/06/30 19:50】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(5) |
小さなプラネタリウム
近所にある、小さな小さな、人も100人くらいしか入らないプラネタリウムに行ってきた。

そのプラネタリウムの一日の上映時間は平日は15:45~の一度。
土日は13:30~と15:45~の二度。
昨日は日曜日。
14:30に家を出て、のんびり寄り道しながら歩いていくと着いたのは15:30。一時間の散歩。
受付で、プラネタリウムが併設されている郷土資料館の入場料60円を払う。これでプラネタリウム代込み。なんと安いことか。
「42 15:45~」とマジックで書かれた整理券をもらってプラネタリウムの会場に入ると席は半分ほど埋まっている。「42という番号は整理番号だったのか」と思いながら、ぐるりと会場内を見渡す。

客はほとんどが子ども連れ。
みんなそわそわとパンフレットを見ながらこれからはじまる宇宙の旅に胸を躍らせているようだ。

真っ白な、まあるい天上には「この文字が見やすい位置に座りましょう」という白いライトの文字が浮かび上がっていた。
「こっちかな?」「いや、ここだと視界に壁の縁が入ってしまう。」「じゃあ、あっち?」
大人2人、席に座っては首をかしげ、また別の席に座っては首をかしげる。これを3,4回繰り返したところでやっと、天上の文字がちょうど真横から見える位置で落ち着いた。

トイレに行ってから席に座り直し、時計を見ると針は上演時間直前の15:43を指していた。
いよいよだ。

「それでは、時間となりましたので、そろそろ本日最後の上演を始めたいと思います。」
50か60代くらいの男性の柔らかく上品な声が、マイクを通して小さなドームに響き渡った。
「最後」だなんて、たった2回の上演なのに。とクスッと肩をすくめると、その声は、そんな会場の規模なんておかまいなしといった風に誇らしげに、それでいて優雅に、上演前の注意事項を話し続けた。
飲食の禁止、写真撮影の禁止、おしゃべりの禁止、そして携帯電話についてのお願い。一通りの説明が為された後、「ちょっと明かりを減らしてみましょう。」という声と同時に、ドーム内が夕焼けのオレンジ色に染まった。
わっと、ざわめく場内。

「あ!月だ!」
という子どもの声に頭上を見上げると、白い、ただ丸く切り取っただけのような月がぽっかりと浮かんでいる。
「月?月じゃありません。あれは、いつも空にあって、ぴかぴか光っている、そう、太陽です。」
「太陽だ。」
その切り抜きの太陽はそのうちゆっくりと傾いて、西の空の縁まで行くとぼやけて消えた。

それから、夜が訪れた。


天気の良い休日の昼。傾いたイスに座ってすごす、いつもよりずっと星がよく見える45分間のその夜は、決して静かではなかったけど(子どもがうるさい)、のんびりとして、とても気分のいいものだった。

上演終了後。
「またいらしてくださいね。」と言う、人の良さそうなおじさんと笑顔を交わして外に出ると、一時間前よりも少しだけ空気が冷たくなっていた。


やるべきことがある中で、それに対抗するように呑気に過ごす。なかなかよい一日だった。



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【2006/01/31 00:41】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(2) |
うれしいプレゼント
私の彼氏は、実家に住んでいるのだが、そのおかげで我が家にはたまにステキなプレゼントがやってくる。
それは、彼氏が実家で私のことを話題にすることによって起こる。

彼氏が、
「どうやら風邪らしい」
と言えば、
「一人暮らしなのにかわいそうね」と、「ふぐぞうすいの素」が。

「二人で使うには(よくお泊まりしていることも公認になっている)タオルが少ない」
と言えば、
「使ってないのがあるから」と、「数枚のタオル」が。

「暖房器具が壊れた」
と言えば、
「じゃあ、物置にあったアレ」と、「電気毛布」が。

それらは、彼氏の大きい鞄や紙袋に入れられて、せっせと運ばれてくる。
今夜も、暖かい電気毛布にくるまれて、のんびりブログの更新。

まだ会ったこともない彼氏のお母さん。
なんとなく情けなくて恥ずかしい気持ちと、どこの馬の骨とも知れない私に親切にしてくれることに対する素直なうれしさ。

明日から、正月にかけて、私は実家に帰る。
そうだ。
お土産に地元名物のおいしいお菓子でも買おう。
きっとまた、それは、彼氏の大きな鞄によって、せっせとあの優しい人のもとに届けられるのだろう。


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【2005/12/26 20:58】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(4) |
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