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腐ったヨーグルト
彼氏が家に来て、久々に料理でもしようと冷蔵庫を開けると、鍋やフライパンやらを使って何かするのに調度よさそうなものは何もなかった。
そういう気持ちで冷蔵庫を開けるのがそもそも久々なのだから、それは予想通りのことだ。

しかし、違う目的で冷蔵庫を開けるのはしょっちゅうなので、厳密に言えば「何か」はある。
牛乳、酒類、乾燥わかめ、アンチョビ、梅干し、干からびたネギの青い部分…。
料理が得意で家庭的な女なら、こんな飲み物と珍味と保存食と使い残しなんかでも価値を持つのかもしれない。
でもそれはあくまで私にとってではない。

それらをかき分けていくと、見覚えのある白いプラスチックの容器が、冷蔵庫の端っこにたたずんていた。
容器の表面には「健康生活プレーンヨーグルト」と書いてある。

ちょっと前に気合いを入れてインドカレーを作ったときの残りだ。
賞味期限は過ぎている。
匂いを嗅ぐ勇気が出ない。

そっとシンクまで運んで、フタを開け、一気に中身を排水溝に流し込んだ。
つんっと酸っぱい匂いがした。
瞬間「嗅いでしまった」という後悔の念がこみ上げた。

勢いよく水でそのどろどろを流し、そのまま容器もばしゃばしゃと洗う。
排水溝に上手くダイブできずにシンクの銀色にはみ出した白いシミは、一度水圧でシンク全体に波模様を描いたが、そのうちにその波も徐々に薄れて、どうやら中心にぽっかりと口を開けた暗い穴にすべて飲み込まれてしまったようだった。



私はよく食べ物を腐らせる。
食材を買うときはいつも、何かつくりたいものがあるときだ。
レストランで食べたアレとか、本格何タラとか。
手の込んだ料理が時たま無性につくりたくなる。
買い出しの時からすでに、料理に対する何かむらむらとした欲望に支配されているから、ものが残ることなど考えていない。

いろんな食材を買ってきて、何時間もかけて料理して、キレイな皿にキレイに盛りつけて、ゆっくり食べる。

後には、少しの満足感と、たくさんの食材が残る。

でも、完璧にやりきってしまった私には残ったものたちへの興味などとうに失われてしまっている。

別段好きでもなく、使いやすいわけでもない。
飾りだとか、隠し味だとか、そんな一時のお役目のために集められたものたち。



手に持ったままの、ヨーグルトの容器の「健康生活」の文字を見ながら、ちょっとだけ食べたい気分になっていると、トイレから出てきた彼氏がゴミ箱をのぞき込んで言った。
「俺、そのヨーグルト好きだったのに、残り捨てちゃったの?」
「だって腐ってたんだもん」
彼氏は「ふーん」と、不満げな顔をしながらキッチンを通り過ぎていった。

そういえば、さっき流した瞬間嗅いだあの匂いは、ヨーグルトのいつもの酸味だったような気がする。

ちょっとした心残りを、空になった容器と一緒にゴミ箱に捨てた。



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【2005/11/01 01:04】 優しい時間 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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